情報を漏らしていなくても問題?CIAの「客観性」と「利益相反」を整理
Asami利益相反があると、客観性を損なう。そう覚えていても、「まだ不正をしていないのに、なぜ問題なの?」と考えると、少し分かりにくいですよね。
今回は、問題を一つ使って整理してみます。
- 利益相反が客観性に関係する理由
- 守秘義務との見分け方
- 問題文から判断するときのポイント
まずは一問、考えてみましょう
学習用オリジナル問題
内部監査人の佐藤さんは、会社の購買業務の監査を担当することになりました。監査では、取引先の選定が適切だったかも確認します。
ところが、対象となる取引先の一社から、佐藤さんは個人で継続的に仕事を受け、報酬を得ています。
佐藤さんは「社内情報は渡していないし、監査では公平に判断するつもりです」と説明しています。
この関係から、最も直接的に懸念されることはどれでしょうか。
A. 監査に必要な専門知識が不足していること
B. 個人的な利害によって、公平な判断が影響を受けること
C. 会社の機密情報をすでに外部へ漏らしたこと
D. 監査手続に十分な時間をかけていないこと
正解はB。客観性に関わる問題です。
では、なぜそう考えるのでしょうか。
「監査で指摘する相手」が「自分のお客さん」だったら?
Asamiここには、二つの立場があります。
- 内部監査人として:問題があれば、事実に基づいて評価し、伝える立場
- 個人として:取引先との関係を保ち、報酬を受け取り続けたい立場
この二つがぶつかる可能性があるんです。
「指摘したら、次から自分への依頼がなくなるかも」
そんな気持ちが、指摘の強さや調べる範囲に影響するかもしれません。本人が意識していなくても、相手に甘くなる可能性があります。
公平に判断する役割と、自分の利益がぶつかり得る。
これが、この例で利益相反を考えるポイントです。
実際に判断を曲げていなくても、問題になる
AsamiGIASの基準2.2では、客観性への影響について、実際に起きているものだけでなく、起こり得るものや、外からそう見えるものも認識し、回避・低減することを求めています。
参考:グローバル内部監査基準・日本語版「基準2.2 客観性の防御」
今回なら、周りの人がその関係を知ったとき、
「この取引先の評価、本当に公平だったのかな?」
「自分の収入を守るために、指摘を控えていないかな?」
と疑問を持つかもしれません。
これは、本人を「不正をする人」と決めつける話ではありません。
本人の気持ちだけに頼らず、公平な判断と、それに対する信頼を守るための考え方なんですね。
では、なぜ守秘義務が正解ではないの?
Asami今回の問題文には、社内情報を外部へ渡した事実は書かれていません。
一方、監査で評価する取引先から、個人的に報酬を受け取っている関係は、はっきり書かれています。
そのため、この問題で最も直接的に確認できるのは、個人的な利益が監査の判断に影響する懸念です。
整理すると、見る場所が違います。
| 論点 | 何に注目する? |
|---|---|
| 客観性・利益相反 | 判断に影響し得る利害関係があるか |
| 秘密の保持 | 情報を適切に利用・保護しているか |
なお、秘密の保持は「外に漏らさなければよい」だけではありません。情報の不適切な利用や、保管・アクセス管理なども関係します。
参考:グローバル内部監査基準・日本語版「基準5.1・5.2」
現実には両方の問題が重なることもありますが、問題を解くときは、書かれている事実が、どの懸念を直接裏付けているかを確認しましょう。
「報酬をもらったら全部ダメ」と覚えなくて大丈夫
Asami今回の例では、報酬があることに加えて、その相手を監査で評価する立場にあることが重要です。
「有償だから客観性」と単語だけで結びつけると、別の問題で迷いやすくなります。
次の順番で考えてみてください。
- 誰と、どんな利害関係がある?
- その関係によって、どんな判断が揺らぎそう?
- 問題文に、実際に書かれている事実は何?
↓
関係を悪くしたくない気持ちが生じ得る
↓
その取引先に関する監査の判断に影響する可能性がある
「利益相反だから客観性」と覚えるところから、なぜ客観性が問題になるのか説明できるところまで進むと、聞かれ方が変わっても考えやすくなります。
答えは覚えたけれど、理由がしっくりこないときは
解説を読んで「正解は分かった。でも、なぜ?」と感じることはありませんか?
そこは、理解を深めるよいきっかけです。
今回も、「情報を漏らしていないのに?」という疑問から、情報の扱いと判断の公平さを分けて考えることができました。
学習相談では、こうした答えだけでは解消しない引っかかりも一緒に整理しています。一人ではしっくりこない問題があれば、どこで迷ったのか聞かせてください。