監査のサンプリング手法の違い|属性・変数・金額単位【CIA】
Asami監査のサンプリングは、対象全体から一部を選んで調べ、その結果を全体についての判断に役立てる方法です。対象全体を「母集団」、選んだ一部を「サンプル」と呼びます。
この記事では、CIAの学習で迷いやすい属性・変数・金額単位サンプリングの違いを、仕事の場面から整理します。
属性サンプリング:承認ルールは守られている?
選んだ発注について、システムの承認履歴を確認します。
- 必要な承認を受けている → はい
- 未承認、権限のない人の承認、発注後の承認 → いいえ
このように、決めた条件を満たす・満たさないで調べ、母集団での発生割合を推定するのが属性サンプリング(Attribute Sampling)です。コントロールのテストでは、ルールから外れた割合=逸脱率に注目します。
Asami例えば、全1,000件から無作為に選んだ50件のうち、2件が未承認だったとします。サンプルの逸脱率は4%。ここから、全体でも約4%、件数にすると約40件に承認漏れがあると推定します。監査では、この推定に抽出誤差も織り込んで、承認ルールが十分に機能しているかを判断します。
変数サンプリング:金額はどれくらい違う?
Asami例えば、全1,000品目から100品目を単純無作為抽出したとします。2万円の差があった品目も含め、100品目の差額を合計すると、帳簿の方が20万円多かった。
20万円 ÷ 100品目 = 2,000円
② 全1,000品目に当てはめる
2,000円 × 1,000品目 = 200万円の過大計上と推定
これが変数サンプリングの一つ、「差額推定」の考え方です。調べる品目数は、必要な精度や金額のばらつきに合わせて決めます。
推定したら、許容できる誤りの金額と比べます。このときは、サンプルのばらつきから求めた推定の幅も使います。許容範囲を超える可能性があれば、追加調査や修正の検討につなげます。
Asami金額単位サンプリング:大きい金額ほど選ばれやすい
金額単位サンプリング(MUS:Monetary Unit Sampling)も、金額の誤りを評価する手法です。特徴は、伝票を一件ずつ同じ確率で選ぶのではなく、記録された金額に比例して、金額の大きい項目ほど選ばれやすくなること。
売掛金などが実際より大きく計上されていないかを調べる場面で使われます。ゼロ金額の項目や帳簿に載っていない取引は、この選び方だけでは拾えないため、別の手続も必要です。
Asami変数サンプリングもMUSも、知りたいのは金額の誤り。MUSは「金額の大きい項目ほど選ばれやすい」という特徴で押さえましょう。
3つを比べるなら「知りたいこと」で
| 手法 | 知りたいこと・特徴 |
|---|---|
| 属性 | 承認などの条件を満たしているか。逸脱がどの程度あるか。 |
| 変数 | 母集団の金額や誤りの金額が、どのくらいか。 |
| 金額単位(MUS) | 金額の誤りを評価する。大きい金額ほど選ばれやすい。 |
発見サンプリングと「どう選ぶか」の違い
発見サンプリング:まれでも重大な逸脱を見つけたい
発生は少ないと見込まれるものの、一件でも見つかれば重要な意味を持つ逸脱を探すときに使う、属性サンプリングの一種です。例えば、承認記録の偽造などを想定します。
一件見つかったら、原因や広がりを追加調査します。結果がゼロ件なら「今回のサンプルでは発見されなかった」と評価します。
ランダム抽出・系統抽出・層別化
こちらは、サンプルの選び方や母集団の分け方の話です。
- ランダム抽出:乱数などで無作為に選ぶ。
- 系統抽出:開始位置を無作為に決め、一定の間隔で選ぶ。データの並びに周期性がないか注意する。
- 層別化:金額帯などで母集団を分け、それぞれから抽出する。
Asami何件選べば、判断の根拠になる?
まず決めるのが「許容逸脱率」。このチェックの仕組みを、どこまで信用するかの線引きです。
でも、チェックを飛ばしていることが多かったら、頼りにできませんよね。
そこで、調べる前に線を引きます。
Asami「ミスしていい割合」ではなく、「チェックの仕組みを信用するための限界」です。超えたら、請求書そのものを詳しく調べるなど、監査の進め方を見直します。
この基準は、監査人が目的やリスクに応じて、監査部門の方法論に沿って設定します。
許容逸脱率を厳しくすると、調べる件数は増える
Asamiほかの条件が同じなら、次の関係になります。
| 設定をどう変える? | 必要なサンプル数 |
|---|---|
| 許容逸脱率を小さくする | 増える |
| より高い信頼度を求める | 増える |
| チェック漏れが多いと予想する | 通常、増える |
件数は、この3つの条件と母集団の規模を、サンプル数表や監査ソフトに当てはめて決めます。予想する逸脱率が許容逸脱率に近い・上回る場合は、その統制を頼る方針自体を見直します。
許容逸脱率を5%と設定し、無作為に選んだ60件にチェック漏れがなかった場合、全体の逸脱率が5%を超えるリスクは低い、と判断する根拠になります。PCAOBの監査基準にも、この60件の例が載っています。
Asami参考:PCAOB AS 2315(.31〜.41・脚注8)。米国の財務諸表監査基準にある、件数を考えるための参考例です。
Asami今はデータ分析で、全件調べられるのでは?
Asami全件分析では、まずデータの抜け漏れと判定条件を確認します。そのうえで、データで分かることと、現物や証拠で確かめることを組み合わせます。
例えば、在庫一覧の金額はデータで全件集計。在庫が実際にあるかは現物で確認。知りたいことに合わせて、確認方法を選びます。
AsamiCIA対策:何を知りたい問題か、選んでみよう
以下は学習用のオリジナル問題です。
Asami① 承認を確かめる
経費申請が、支払前に所定の承認を受けているかをテストする。属性サンプリングで主に評価するものは?
A.承認ルールからの逸脱の割合
B.経費の誤りの総金額
C.最も金額の大きい経費
D.経費不正が一切ないこと
② 金額を推定する
在庫から品目を抽出し、帳簿金額と確認した金額との差を使って、在庫全体の誤りの金額を推定したい。この目的に合うのは?
A.属性サンプリングで承認の有無を集計する
B.変数サンプリングを用いる
C.最大金額の品目だけ見て、全体は正しいと判断する
③ MUSの特徴
売掛金の過大計上を調べるため、金額単位サンプリングを使う。特徴として適切なのは?
A.すべての売掛金項目が同じ確率で選ばれる
B.最大の項目だけを必ず選ぶ
C.記録金額の大きい項目ほど選ばれやすい
シラバスではどこにつながる?
現行CIA Part 2シラバスでは、属性サンプリングという名称自体は明記されていません。関連するのは、セクションA・6の監査手続の決定、特にコントロールの有効性を検証する手続の選択です。この記事は、その理解を補う内容として整理しています。
参考:日本内部監査協会・CIA Part 2シラバス/CIA試験参考問題の研究:サンプリング手法(2009年・手法の参考)/GAO・Financial Audit Manual/Diligent:Classical variables sampling/IIA:Continuous Auditing and Monitoring(2025)