Written by Asami chan

リスクアペタイトとリスクトレランスの違いは?配送会社の例で解説【CIA】

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本を持った読者さん読者さん
CIAでよく出てくるけど、カタカナばっかりでよく分からない〜。
そもそも「あぺたいと」って何?
AsamiAsami
英語にすると appetite。「食欲」や「意欲」という意味があるよ。
本を持った読者さん読者さん
食欲って、ごはん?🍚
AsamiAsami
リスクアペタイトは、目標のために、どんなリスクをどれだけ受け入れるつもりか、という話です。
本を持った読者さん読者さん
じゃあ、トレランスは?
AsamiAsami
tolerance は「許容」や「耐えること」。
ここでは、目標からのズレをどこまで許せるかだよ。配送会社の例で比べてみよう。

まず、2つの意味を短く整理

リスクアペタイト
目標のために、どんなリスクをどれだけ引き受ける?

組織が戦略や目標の達成に向けて、受け入れる意思のあるリスクの種類と量。

リスクトレランス
この目標から、どこまでのズレを許す?

個別の目標に対して、実績がどこまで逸脱してよいかという許容範囲。

アペタイトは戦略や投資を判断するときの指針。トレランスは、個別の目標に対する実績を判断するときの基準になります。

配送会社の例で、違いを見てみよう

「配送の速さで選ばれる会社になりたい」。そんな目標を持つ配送会社を考えてみましょう。

アペタイト:速さのために、何を受け入れる?

配送の速さを競うため、一定の追加コストが発生するリスクは受け入れる。
ただし、安全に関するリスクは極力抑える。

例えば、配送を速くするために応援スタッフを手配すれば、人件費が想定より増える可能性があります。そのリスクは一定程度受け入れる。でも、無理な運転で速く届けようとはしない。

このように、目標達成のために、どんなリスクをどの程度受け入れるかという会社の方針がリスクアペタイトです。

AsamiAsami
何でもリスクを取るわけじゃないよ。コスト増はある程度受け入れるけど、安全面は慎重に。リスクの種類によって姿勢が違うんです。

トレランス:時間どおりに届く割合は、どこまで下がってよい?

では、実際の配送状況をどう判断するのでしょうか。ここでは仮に、こう決めたとします。

時間どおりに届ける割合の目標は98%。
許容する下限は95%。
98% → 目標を達成
目指している水準です。
96% → 目標未達。でも許容範囲内
目標には届いていないため、改善の余地を確認します。
94% → 許容範囲も外れている
遅れの原因を調べ、必要な対応を検討します。

この個別の目標から、どこまでのズレを許容するかがリスクトレランスです。

AsamiAsami
「95%でいいや」ではなく、目指すのは98%。95%は許容する下限だよ。

つまり、「速く届けるため、どんなリスクを引き受ける?」と「時間どおりに届いた実績は、許容範囲内?」。決めていることが違うんですね。

誰が決めるの?経営者?部門長?

会社全体の方針を決めることと、部門で使う基準にすることを分けるとイメージしやすいです。

アペタイト:経営陣が策定し、取締役会が審議・承認・監督するのが基本
配送会社なら「速さのためのコスト増は一定程度受け入れる。でも、安全面は慎重に」という全社の方針を考えます。
トレランス:経営陣や、権限を与えられた部門責任者が具体化する
配送部門の責任者が経営陣と調整し、「定時配送率の目標は98%、許容する下限は95%」といった基準に落とし込みます。

具体的な決裁者は会社の権限分担によります。「アペタイトは社長、トレランスは部門長」と肩書きだけで固定しないでくださいね。

AsamiAsami
会社全体の方針を、各部門で使える基準にしていくんだね。成績が悪かったからといって、部門が勝手に「下限を90%にしよう」と変えてよいわけではありません。

内部監査は、許容範囲を自ら決める担当ではありません。設定や運用が適切かを評価し、必要に応じて助言する立場です。

見分けるのは「数字があるか」ではない

今の例だと「アペタイトは言葉、トレランスは数字」と覚えたくなるかもしれません。でも、アペタイトも金額や割合で表せます。

選択肢では、数字の有無よりも何を定めているかを見てください。

アペタイト トレランス
組織として受け入れる
リスクの種類と量
個別目標に対する
逸脱の許容範囲
速く届けるために
どんなリスクを引き受ける?
この実績のズレは
許容範囲に収まっている?

2つは別々に好きな基準を置くものでもありません。個別目標の許容範囲も、組織としてのリスクの受け入れ方と整合させます。

CIA対策:例題で確かめてみよう

以下の3問は、CIA試験を意識して作成したオリジナル問題です。公式問題ではありません。

AsamiAsami
選択肢を押すと解説が開くよ。
選ぶ前に「これは何を決めている?」と考えてみてね。

例題① リスクアペタイト声明

ある企業では、各事業部が独自の判断でリスクを引き受けており、組織全体の戦略と整合しない投資が行われていた。

この状況を改善するため、リスクアペタイト声明に定める内容として、最も適切なものはどれか。

A.各投資案件の収益目標に対する、具体的な逸脱の許容範囲
Aはリスクトレランス。個別の収益目標から、どこまでズレてよいかを定めています。この問題で必要なのは、組織として引き受けるリスクの共通の指針です。
B.戦略的目標の達成に向けて、組織が受け入れるリスクの種類と量
正解はB。事業部ごとの投資判断を戦略とそろえるため、組織としてどんなリスクをどれだけ引き受けるかを示します。
C.各事業部で識別したリスクと、その発生可能性・影響の一覧
Cはリスク登録簿の内容。どんなリスクがあるかを整理するものです。そのリスクをどれだけ受け入れる意思があるか、という方針とは異なります。
D.投資の申請から承認までに必要な、具体的な業務手続き
Dは統制手続き。投資をどう申請・承認するかという仕事の進め方です。受け入れるリスクの種類と量を定めるものではありません。

例題② リスクトレランス

内部監査人が、飲食店チェーンのリスク管理をレビューしている。次のうち、リスクトレランスを示すものとして最も適切なのはどれか。

A.新規出店による成長のため、一定の投資損失リスクを受け入れる。
Aはリスクアペタイト。成長のために、どんなリスクを引き受ける意思があるかを示しています。
B.食材価格が上昇する可能性と、利益への影響を分析する。
Bはリスク評価。起こりやすさと影響を分析する活動です。目標からの逸脱をどこまで許すかは定めていません。
C.食材の廃棄率は仕入量の2%を目標とし、目標を超えても3%までは許容する。
正解はC。廃棄率という個別目標について、逸脱の許容範囲を定めています。目標の2%と、許容上限の3%を区別しましょう。
D.食材の廃棄を減らすため、毎日の在庫を確認して発注量を調整する。
Dは具体的な管理活動。廃棄を減らすために「何をするか」です。「どこまでの逸脱を許すか」という基準とは異なります。

例題③ 目標未達なら、許容範囲外?

ある配送会社は、定時配送率の目標を98%、許容する下限を95%と定めている。今月の実績は96%だった。

この実績の捉え方として、最も適切なものはどれか。

A.95%を上回っているため、目標を達成している。
95%は目標ではなく、許容する下限。目標は98%なので、96%では目標未達です。
B.98%を下回っているため、許容範囲も外れている。
目標未達と、許容範囲外は別。96%は目標には届いていませんが、下限の95%を上回っています。
C.目標には届いていないが、定めた許容範囲内にある。
正解はC。96%は目標の98%より低く、許容下限の95%より高い数値です。「目標を達成したか」と「許容範囲内か」を分けて判断しましょう。範囲内だから改善の検討が不要、という意味ではありません。
D.今月の実績に合わせ、配送部門が独断で目標を96%に変更する。
実績に合わせて、後から目標を変えるのは適切ではありません。見直しが必要なら、理由を検討し、会社で定めた権限・承認手続きに従います。

定義・解説の確認に使用した一次資料
IIA:Global Internal Audit Standards 用語集比較(2024)の「risk appetite」「risk tolerance」。
COSO:Risk Appetite—Critical to Success(2020)、本文5・10・15・19〜22ページ。配送会社・飲食店の場面や数値は説明用の例です。

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