組織文化と統制環境の違いは?ベンチャー企業の例で理解【CIA】
「組織文化も考慮して、リスクを評価する」。CIAの学習で出てくる話ですが、文化って、会社の雰囲気のこと? それが監査にどう関係するのでしょうか。
Asami代表がXやnoteで、組織の価値観やルールの理由を伝えていたら?
組織がどう生まれ、何を大切にしているのか。経費のルールは、どんな考えで決めたのか。代表がXやnoteで、そうした背景や理由を伝えている。
単に「ルールを守ってね」と伝えるだけでなく、なぜそのルールがあり、どんな判断や行動を大切にしてほしいのかを示す。こうした経営者の姿勢は、統制環境に関係する「Tone at the Top」の一例です。
ただし、発信していれば十分というわけではありません。代表自身もルールを守っているか。問題が起きたとき、言っていたことに沿って対応するか。実際の行動も見ます。
「すぐ経費精算してね」は、文化?ルール?
展示会に参加した担当者へ、チームの責任者が「戻ったら、すぐ経費精算を入力してね」と指示します。
これはまず、日々の業務管理や、具体的なルールの運用です。
それが繰り返され、社員の間で「精算はためないのが当たり前」になっていく。その共有された考え方や行動に、組織文化が表れます。
Asami一方、経営側の承認は後回しでもいい?
ここで、別の場面を考えます。
経費精算はすぐに行うよう求められる一方、取締役会議事録の社内確認・承認フローはなかなか進まない。遅れていても、誰も対応を求めない。
その状態が繰り返されると、周囲はこう受け取るかもしれません。
ルールは大事。でも、経営側の手続きは後回しでもいいんだ。
会社が掲げている姿勢と、実際に許されている行動は、必ずしも一致しません。
もちろん、一度の遅れだけで文化を決めつけることはできません。遅れた理由、繰り返しの有無、周囲の対応を確かめます。
組織文化と統制環境の違い
この例で、2つを整理してみましょう。
| 観点 | 組織文化 | 統制環境 |
|---|---|---|
| 見たいこと | どんな考え方や行動が、会社の当たり前になっているか | 適切に仕事をするための土台が整っているか |
| この例なら | 「現場のルールは厳しく守る。でも経営側の遅れは仕方ない」という受け止め方 | 経営者の姿勢、承認の責任分担、必要な教育、遅れを放置させない対応など |
文化=気持ち、統制環境=制度、と完全に分かれるわけではありません。
統制環境には、倫理観や経営者の姿勢も含まれます。会社の責任の持たせ方や評価の仕方が文化をつくり、その文化がルールの運用にも影響します。
例えば、アルバイトや学生の参加が多い会社なら、「経験がないから仕方ない」で終わらせず、必要な説明や研修、相談先が用意されているかも見たいところです。
組織文化が、監査で考えるリスクにどうつながる?
Asami例えば、経営側の承認の遅れが放置されているなら、次のようにつなげます。
経営側の手続きは後回しにされがち
想定するリスク:必要な確認が終わらないまま処理が進む。
監査で確かめること:承認が必要な業務で、未承認のまま進めた案件がないか。
遅れても誰も対応を求めない
想定するリスク:未処理の案件が放置される。
監査で確かめること:担当者・期限・督促や報告の仕組みが機能しているか。
意思決定した人に疑問を伝えにくい
想定するリスク:不適切な指示や例外処理が見過ごされる。
監査で確かめること:例外処理の記録や、相談・報告への対応が適切か。
議事録の承認が遅れているからといって、他の業務にも問題があると断定はできません。
文化を手がかりに、何を確かめるべきかを考える。そこから記録や面談で確認する。これが内部監査での使い方です。
手順書があることだけで安心せず、その手順が実際に守られる環境なのかも見るんですね。
例題で確認してみよう
CIA学習用のオリジナル問題です。
Asami問題1:組織文化が表れているのは?
ある会社には、問題を発見したら担当責任者に報告するルールがあります。しかし社員の間では、「悪い報告をすると評価が下がるので、黙っていた方がよい」という認識が共有されています。
組織文化を最も直接的に表しているのはどれでしょう。
A.報告先が規程に定められていること
報告の仕組みに関する説明です。規程の存在だけでは、社員が実際にどう考え行動しているかは分かりません。
B.悪い報告は控えた方がよい、という認識が共有されていること
正解です。会社で共有されている考え方が、実際の行動に影響しています。
C.報告用のシステムが導入されていること
報告を支える手段です。システムがあっても、報告すると不利になると思われていたら、情報は上がってこないかもしれません。
問題2:内部監査人はどう考える?
経営者による例外的な処理について、社員が「経営陣が決めたことだから」と確認せずに進めている様子が見られました。
内部監査人の対応として、最も適切なのはどれでしょう。
A.承認規程があるため、コントロールは有効と判断する
規程があるだけでは、実際に機能しているとは判断できません。
B.不正が行われていると断定する
文化はリスクを考える手がかりですが、それだけで不正の証拠にはなりません。
C.必要な確認が省略されるリスクを考え、実際の処理や承認記録を確かめる
正解です。規程の存在だけで安心せず、印象だけで不正とも決めつけず、実態を確認します。
関連記事:ガバナンスとは?経営陣も監督される側になる理由 / ガバナンスを担う取締役会・経営者・内部監査の役割
参考:COSO 内部統制フレームワーク概要 / IIA「Under the Surface」