Written by Asami chan

内部監査の客観性が損なわれるケース|バイアスと利益相反【CIA】

WORK


読者さん読者さん
客観性って、公平に判断することですよね。自分では公平なつもりなら大丈夫?
AsamiAsami
「つもり」だけでは見えない偏りもあるんです。自分の仕事、親しい人、自分の利益が関わる場面で考えてみよう。

利益相反とは、公正に仕事をする役割と、自分や関係者の利益がぶつかる状況です。今回はCIAで学ぶ自己評価のバイアス・親近性バイアス・利益相反を、具体例で整理します。客観性と独立性の違いはこちら。

① 自己評価のバイアス|自分が作ったから、問題ない?

以前、あなたが出荷承認の手順を作ったとします。内部監査へ異動した後、その手順を評価することになりました。

承認が抜けた記録を見つけた。でも、「私が十分考えて作った手順だから、仕組みに問題はないはず」。

証拠を検討するより、自分の仕事を正当化する方へ気持ちが向いています。これが自己評価のバイアスを考える場面です。

AsamiAsami
詳しく知っていることと、自分の仕事を厳しく見直せることは別なんだね。

② 親近性バイアス|知っている人だから、大丈夫?

今度は、長年一緒に働いた担当者の業務を監査する場面です。

「この人はいつもしっかりしているから」と、普段なら確認する記録を見ずに、説明だけで問題なしと判断した。

親しさや過去の経験から「今回も大丈夫」と思い込み、確認・評価が甘くなっています。これが親近性バイアスの例です。

人との仲の良さだけでなく、慣れた業務について「以前も問題なかったから」と思い込む場合にも注意します。

③ 利益相反とは?|会社のためと、親戚のためがぶつかる

例えば、広報担当者がWeb広告を依頼する広告代理店を選ぶ場面を想像してみてください。

本来は価格や品質などを比較し、会社にとって適切な取引先を選ぶ立場です。ところが、「親戚の会社に仕事を回したい」という事情から、その会社を優先してしまったらどうでしょう。

会社のために選ぶ役割と、親戚の利益を優先したい事情がぶつかっています。これが利益相反です。

読者さん読者さん
自分がお金をもらっていなくても?
AsamiAsami
そう。親戚など、関係のある人の利益を優先する場合もあるんだよ。相見積もりを取っていても、選ぶ判断が偏っていたら、それだけで公平とはいえないよね。

内部監査でも同じです。親戚の会社との取引を監査することになったら、公正に評価する役割と、親戚を守りたい事情がぶつかる可能性があります。

監査対象の会社から個人的に副業の報酬を受けている場合も、「厳しく指摘したら、自分の仕事がなくなるかも」という利害関係が生まれます。

利益相反は、報酬の問題だけではありません。自分の立場や関係者の利益など、公正な判断と競合する事情がないかを見ます。

「まだ判断を曲げていない」なら問題ない?

読者さん読者さん
親戚の会社でも、私はちゃんと公平に監査します!
AsamiAsami
その意思は大事。でも「公平に判断します」という約束だけで、利害関係そのものがなくなるわけではないんだよね。

GIAS基準2.2では、客観性への実際の侵害・侵害の可能性・侵害があると見られる状況を認識し、回避または低減することを求めています。

例えば、親戚の会社を監査して「問題なし」と報告しても、周囲は「身内だから甘く見たのでは?」と疑うかもしれません。

実際に公正であることに加え、公正さへの信頼を損なう関係にも対処する必要があるんですね。関係を隠して見えなくするのではなく、開示して、必要な措置を取ることが大切です。

バイアスは判断の偏り、利益相反は公正な役割と別の利益がぶつかる状況に注目した言葉。両方が重なることもあるので、無理に別々の箱へ分けなくて大丈夫です。

「他の監査人が、同じ証拠と手続きをたどっても、同じ結論に至れるだろうか?」という視点も大切です。「あの人なら大丈夫」ではなく、何を確認し、なぜそう判断したかを記録で示せるようにします。

利益相反かも? 迷ったら誰に相談する?

読者さん読者さん
親戚の会社だけど、仕事で関わったことはないし……。これも伝えた方がいいの?
AsamiAsami
自分だけで「問題ない」と決めず、CAE(内部監査部門長)や指定された監督者に、関係と担当する業務を伝えて、対応を検討しましょう。

基準2.3は、客観性に影響し得る侵害に気づいた場合の開示を求めています。担当変更や別の人による監督など、状況に応じた対応を考えます。相談・開示しただけで、そのまま担当してよいと決まるわけではありません。

例題で確認してみよう

CIA学習用のオリジナル問題です。公式問題ではありません。

AsamiAsami
選択肢を押すと解説が開くよ。何が判断に影響しそうか、考えてみてね。

例題① 自分が作った手順

監査人は、自分が以前設計した手順について、不備を示す記録があるにもかかわらず「十分検討して作ったので問題ない」と評価した。特に表れているものはどれか。

A.自己評価のバイアス
正解! 自分の過去の仕事を批判的に見直せず、証拠よりも自分の設計への信頼を優先しています。
B.親近性バイアス
この問題では、親しい人や慣れた業務への思い込みよりも、「自分が作った仕事」を正当化している点が中心です。最も直接的なのはAです。
C.守秘義務の違反
秘密情報の漏えいや不適切な利用を示す場面ではありません。問われているのは、評価が偏る理由です。

例題② 親戚の会社を監査する

監査人は、親戚が経営する委託先との取引を監査する予定である。本人は「個人的な報酬は受け取っていないし、公平に判断できる」と話している。最も適切な考え方はどれか。

A.報酬を受け取っていないので、利益相反の心配はない
不正解。利益相反は金銭の受け取りに限りません。親戚の利益を守りたい事情も、公正な評価とぶつかり得ます。
B.本人が公平だと考えていれば、関係を伝える必要はない
不正解。本人の意思だけでは利害関係を解消できません。周囲からどう見えるかも含めて考えます。
C.関係を開示し、客観性への影響と必要な対応を検討する
正解! 実際に評価を曲げる前でも、判断に影響し得る関係を伝える必要があります。開示しただけで、そのまま担当してよいと決まるわけではありません。

参考:GIAS基準2.1・2.2・2.3・14.1・14.6/CIA Part 1シラバス(セクションB・2)。各場面は学習用に一般化・構成した例です。

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