内部監査の客観性を守るには?担当変更・相談・贈答品のルール【CIA】
今回は、内部監査の客観性を守るために「監査人がすること」と「CAE(内部監査部門長)がすること」を、具体例で見てみましょう。
Asami① 以前担当していた業務なら、まず申告する
配送部門から内部監査へ異動した人が、半年前まで自分で管理していた出荷業務の監査を任されました。
Asami過去12か月以内に責任を持っていた業務へのアシュアランスは、客観性が損なわれていると推定されます。
これは単なる推奨ではありません。基準2.2の要求事項です。「本人が公平にできると言っているから、そのまま評価を任せる」という扱いにはしません。
| 立場 | この場面ですること |
|---|---|
| 監査人 | 以前の担当内容と時期を、CAEや指定された監督者へ伝える |
| CAE | 本人による自己評価にならないよう、別の監査人への担当変更などで体制を整える |
「12か月を過ぎたら自動的に問題なし」でもありません。判断に影響する事情が残っていないかを確認します。
担当変更・再配置の判断チェック
- 過去12か月以内に自分が責任を持った業務を評価する?
→ その本人にアシュアランスの評価を任せず、別の担当者などで体制を整えます。 - 親戚の会社や、自分の副業先・利害のある取引を監査する?
→ 関係を開示。公正な評価への影響を十分に低減できないなら、当該監査の担当から外します。 - 親しさや過去の関与で、確認を省く・不備を軽く扱うおそれがある?
→ CAEが影響を評価し、監督の強化で足りるか、担当変更が必要かを判断します。
ここでの再配置は、会社の別部署への異動に限りません。その監査の担当を別の人に替えることも含みます。
アドバイザリーの場合は?
以前担当した業務について助言を求められた場合は、引き受ける前に、客観性を損なう可能性を依頼者へ開示することが必須です。
監査人はCAEにも事情を伝え、CAEはその影響を踏まえて、担当や監督の方法を判断します。アドバイザリーでは、以前担当していたという理由だけで、一律に担当変更が必須になるわけではありません。
Asami② 担当を替えられないときは、外部委託も検討する
例えば、チーム全員が監査対象の業務に責任を持っていた場合。社内で交代しても、自己評価の問題が残ります。
その場合は、外部の専門家に監査を実施してもらう、または監督してもらう方法があります。
必須なのは:客観性への問題を放置せず、回避・低減すること。
対応方法の一つが:監査の実施や監督を外部へ委託すること。
「問題があったら必ず全面外注」ではありません。CAEが、何に問題があり、どの対応なら低減できるかを判断します。
CAE自身が、監査対象の責任者だったら?
例えば、内部監査部門長がコンプライアンス部門長も兼任している会社を想像してください。
そのコンプライアンス業務を内部監査が評価すると、CAEは、自分が責任を持って運営する仕事を、自分の部下に評価させる立場になります。
「問題がある」と言いにくい体制ですよね。
このように、CAEが責任を持つ業務へのアシュアランスでは、内部監査部門の外にいる独立した者による監督が必須です。
ここでいう「外」は、まず内部監査部門の外という意味。必ず社外という意味ではありませんが、独立性や能力を確保できる外部専門家に監督を依頼する方法もあります。
外部へのアウトソースを検討するチェック
- 内部監査部門に、利害関係のない適任者がいない?
→ 外部の専門家に監査の実施を依頼する方法を検討します。 - 実施担当者は確保できるが、公正に監督できる人がいない?
→ 監督を外部へ委託する方法を検討します。 - CAE自身が監査対象業務の責任者を兼ねている?
→ 内部監査部門の外の独立した者による監督は必須。適切な社内の監督者を確保できなければ、社外の専門家などを検討します。
「人が少ないから必ず外注」ではなく、必要な公正さと能力を社内で確保できるかで考えます。委託先にも利害関係がないかを確認します。
③ 侵害の開示が必要なのは、どんなとき?
「監査対象の責任者が親戚だった。でも、自分は公平にできると思う」
こんな場合も、自分だけで問題なしと決めません。
監査人はCAEや指定された監督者へ速やかに開示します。CAE自身の客観性に問題がある場合は、取締役会へ開示します。
実際に判断が偏った場合だけでなく、周囲から公正さを疑われる状況も含みます。
Asami侵害の開示が必要になるチェック
- 自分の過去の仕事、親族関係、投資・副業などが、今回の評価に影響し得る?
→ 判断を曲げる前でも、CAEや指定された監督者へ伝えます。 - 実際には公平でも、第三者から「甘く評価するのでは」と見られる事情がある?
→ 見かけ上の侵害も開示の対象です。 - 監査終了後に、結果の信頼性に影響する関係や事情が分かった?
→ 終了済みでも報告。CAEが関係者と結果への影響・対応を検討します。
監査人の問題はCAE・指定された監督者へ。CAE自身の問題は取締役会へ。迷う場合も、自分だけで「開示不要」と決めず相談します。
④ 贈答品・便宜・報酬を受け取ってはいけないのは?
監査中の取引先から、こんな申し出がありました。
これは、評価に影響する便宜です。申告すれば受け取ってよい、というものではありません。
一方で、贈答品をすべて一律に禁止するという説明でもありません。
客観性を損なう可能性や、そう見られるおそれがあるものは受け取らない。それに当たらず、適用される社内ルールで認められるものは、必要な申告・承認・記録を行います。
Asami受け取りが不適切になるチェック
- 「良い報告を」「指摘を減らして」など、評価への見返りを期待されている?
→ 金額にかかわらず受け取らず、所定の手順で報告します。 - 自分や家族だけへの特別な割引・旅行・接待などで、厳しい指摘をしにくくなる?
→ 現金でなくても対象です。判断への影響や、周囲からの見え方に問題があれば受け取りません。 - 監査対象者から個人的な謝礼・報酬を受け取る?
→ 公正な評価と利害がぶつからないかを確認。客観性を損なう、または損なうと見られるものは受け取りません。
問題がなく、社内ルールで認められるものは必要な申告・承認・記録を行います。すでに届いた場合も黙って保有せず、報告して返却などの対応を確認します。
CAEは、内部監査の客観性を守る仕組みを作る
例えば、次のように整理できます。
| 場面 | 決めておくルール |
|---|---|
| 担当を決める前 | 過去の担当業務、親族関係、副業などを確認する |
| 問題に気づいたとき | 誰へ、いつ、何を伝えるかを決める |
| 申告を受けた後 | 担当変更や外部委託などを判断し、対応を記録する |
| 贈答品を提示されたとき | 受け取りの可否、相談・申告・承認の手順を決める |
監査人は事情を伝え、ルールを守る。CAEは、その情報を踏まえて担当や監督の体制を整える。
「公平でいよう」という気持ちを、実際の行動につなげるための仕組みです。
内部監査の客観性を、例題で確認してみよう
CIA学習用のオリジナル問題です。
Asami例題① 詳しい人に任せればよい?
監査人は、4か月前まで配送委託先の選定・管理に責任を持っていた。その業務のアシュアランスを担当する際、最も適切な対応はどれか。
A.経験が豊富なので、そのまま担当する
B.関係を開示し、当該業務に責任を持っていなかった監査人への担当変更を図る
C.本人が公平に判断すると約束すれば、担当してよい
例題② 会社の金額基準内なら受け取れる?
監査対象部門から「良い報告を期待しています」と、会社の金額基準内の贈り物を渡された。最も適切な対応はどれか。
A.金額基準内なので受け取る
B.監査終了後に受け取ると約束する
C.評価への影響が疑われるため受け取らず、所定の手順で報告する
参考:GIAS基準2.2・2.3。事例・問題は学習用に構成しています。
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